福岡がん総合クリニック

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市民公開講座「がんプレシジョン医療の幕開け」Q&A

こちらは2018年11月10日(土)に行われた市民公開講座「がんプレシジョン医療の幕開け」において、質問カードを書かれた方への回答です。

セミナー会場でお答えできなかったご質問に対する回答をいたします。質問の内容から5つのカテゴリーに分けております。
 1)免疫療法関連
 2)薬剤療法関連
 3)ネオ抗原ワクチン関連
 4)ゲノム医療関連
 5)がん医療全般

1) 免疫療法関連

CAR-T療法やTCR遺伝子改変CTL療法は1回数千万円〜1億円かかるので、あと10年は標準治療にはならないでしょう。ネオ抗原ワクチン療法や腫瘍浸潤リンパ球を用いた免疫療法はより現実的な治療になる可能性があります。ネオ抗原ワクチンは、個人個人異るワクチンを投与する方法なので、薬や非特異的活性化リンパ球療法とは異なりますので、その点が治療へのハードルでしょう。

がん拠点病院で免疫チェックポイント阻害剤「テセントリック」をうける場合、保険外での免疫療法の併用には、拠点病院の先生方が反対されます。それは、自己免疫病のリスクが増すのではという危惧があるからだと思います。まずは、テセントリックのみで自己免疫病が起きない事を確認する必要があります。ネオ抗原ワクチン療法は、がんの遺伝子変異のみを標的にする安全な免疫療法ですので、将来、併用できる可能はあります。当院で、免疫チェックポイント阻害剤の単剤での副作用がないと判断されたら、併用することもありえます。

保険適応の標準治療になるのは難しいと思われます。当院では、自己腫瘍蛋白や、ミルテニーのロングペプチド(ほとんどの患者さんへ適応)、オンコアンチゲンペプチド(HLA-2402, 0201,0206の方)の他、最近では新鮮腫瘍が採取できる場合には遺伝子検査を経て、ネオ抗原ペプチドを加えた樹状細胞ワクチン療法を行っています。

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤で完治したがん患者さんでは、ネオ抗原を見つけるCTLというTリンパ球が主体となって働いていることがわかりました。すなわち、がんの完治のために必要なのはTリンパ球です。NK細胞は、MHCクラスIが減少した特殊ながん細胞の攻撃には重要です。NK細胞だけを多数増やして患者さんに投与した臨床試験は、米国国立がん研究所、京都府立医大、ドイツの大学病院などが行いましたが、がんの縮小効果はほとんど見られなかったと報告されています。NK細胞は補助的な意味でがんに働いている可能性はありますが、がん細胞攻撃の主体ではありません。

悪性B細胞型リンパ腫では、CAR-T療法が米国では臨床試験が行なわれており、将来の治療として期待されていますが、費用が1回5千万円と非現実的ですし、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤も効果が20〜30%の患者さんでありそうですが、命に関わる自己免疫病も起こり得ます。悪性リンパ腫もネオアンチゲンが多数報告されていますので、ネオアンチゲンワクチンも、今後可能かと思います。



2) 薬剤療法関連

ザーコリ等の標準薬が効かない場合、ブルガチニブ、それから脳転移に効くロルラチニブがあり、FDAの承認後、我が国でも保険適応になっていく予定です。

どちらの薬剤も保険外ですので、個人輸入が必要です。MEK阻害剤の副作用はまだ対処可能であるにしても、オプジーボについては命に関わる自己免疫副作用(間質性肺炎など)は覚悟する必要があります。予防治療に命をかける必要はなく、あくまでも安全性の高い方法を選択すべきでしょう。

がん遺伝子パネル検査で、よく効く薬剤が見つかる確率は10〜20%程度で、この数値を低いと見るか、許容範囲の数値とするかは意見が分かれます。今後、遺伝子パネル検査で扱う遺伝子と、その異常に対応する治療薬剤は、10年後にはさらに増えると思います。ホルマリン固定組織標本によるがん遺伝子パネル検査では、正確なネオアンチゲン検査はできません。新鮮がん組織が必要です。新鮮腫瘍組織があればネオアンチゲン検査もでき、遺伝子パネル検査もできます。



3) ネオ抗原ワクチン関連

ネオ抗原ワクチンのためには、新鮮腫瘍組織か凍結がん組織が必ず必要です。ネオ抗原予測のためにはネオ抗原のDNA(遺伝子変異)とRNA(異常な蛋白の出現量)のどちらも調べる必要性があるのですが、ホルマリン固定組織では、RNAの発現が調べられないので正確なネオ抗原予測ができません。

ネオ抗原ワクチンが可能か、また他の治療があるかどうかは、ご来院頂いた上で診察してみなければ分かりません。

ネオ抗原ワクチンの実績については、海外でもまだ開始されたばかりであり、転移性膵臓がんの患者に対しては当院でも最近開始したところです。一般的には、膵臓がんは遺伝子変異の少ないがんなので、ネオ抗原も少ない傾向があります。しかしながら、昨年、ネイチャー等で報告してされた論文では、ネオ抗原が膵臓ガンの予後に関与していることやIPMNタイプの膵臓ガンでのネオ抗原の重要性が報告されましたので、ネオ抗原ワクチンの可能性はあると思います。

ネオアンチゲンワクチンは、1)新鮮癌組織が採取できる、2)成分採血が可能、3)治療材料がそろうまでに2〜3カ月かかるのでその間のがんの進行を止めることができる、などのハードルがありますので、これらをクリアーできたら、当院にて治療が可能です。治験はまだ準備段階で始まっていません。

ネオアンチゲンワクチンの副作用はほとんどないと考えられます。これまでワクチンは、がん細胞そのもの、癌関連抗原のたんぱく質、ペプチドなどが使用されていますが、これらには正常細胞も多少は有する抗原が含まれており、自己免疫等の副作用も懸念されていましたが、実際には、重篤な副作用はほとんど報告されていません。ネオアンチゲンは、遺伝子異常に基づくアミノ酸置換による正常細胞にはない本物の異物(ペプチド)ですので、ネオアンチゲンのワクチンは、自己免疫を起こす可能性のもっとも少ない安全な癌ワクチンになると考えられます。実際、2015年から開始された欧米からのネオアンチゲンワクチン療法の英文医学論文報告では自己免疫などの副作用はなかったと報告されています。

ネオアンチゲンTCR遺伝子導入T細胞療法も期待されていますが、一回1億円かかる状況なので、今は非現実的免疫療法です。現時点では、ネオアンチゲンワクチン療法が現実的な免疫療法と思います。



4) ゲノム医療関連

まず、今後、がん治療に携わる医師は全て「遺伝子」や「ゲノム医療」に精通しなければなりません。しかし、癌治療専門医には患者への十分な説明する「時間」がありません。遺伝カウンセラーには、その医師の補助をして頂きながら、患者さんや看護師に対して、遺伝相談をして頂く必要がありますので、主治医との密接なコミュニケーションが必要です。

基本的には同じ人間なので、既に集積されている欧米のデータを利用することもありますが、日本人でのデータ集積をすることで日本人特有な変化が見つかる可能性もあります。もちろん、データ解析のみでなく、ゲノム検査をする患者さん自身の治療法をみつけるために行う訳ですので、無駄にはなりません。

日本での癌ゲノム医療は、すでに始まっています。保険外自費診療では大学病院や国立がん研究センターにて60〜110万円で受けることができますが、手術で採取されたホルマリンがん組織と主治医からの紹介状が必要です。

遺伝子検査の一部が、一部のがんに保険適応になる見込みです。



5) がん医療全般

「緩和医療」は、終末期医療やホスピスでの医療と同義ではありません。がんになれば、どの段階でも苦痛を緩和するための「緩和医療」は必要になります。「諦めない医療」とは、患者さんが希望を持ち続けられる医療サポートのことであり、「緩和医療」を受けつつ最後まで希望を失わないがんとの向き合い方はあるはずです。

大腸がんに限って言えば、肝臓や肺への転移が1個ない2個までであれば適応になると思いますが、その他はケースバイケースですが、通常は適応ないと思われます。

診察してみないとわかりませんが、何もないということはないと思います。おそらく、標準治療を行うことで、無治療の場合よりも患者さんの予後に悪影響が大きいと判断されたのであろうと思います。

日本の癌医療は、2006年からのがん対策基本法による均てん化医療により全国の癌拠点病院で同じ様に受けられます。しかし、その医療は、治療ガイドラインに基づいた保険適応のある標準治療のみとなります。少数の患者さんでは治験を受けることができる場合もありますが、なかなか、そのような治験が募集されている時には受けることができる可能性が少ないのが現状です。試験的な医療や多施設ランダム化臨床試験を経ていない医療(免疫細胞療法など)は、がん治療ガイドラインにないという理由から、治療法の選択肢に入れてもらえないとう残念な現実があります。この理屈を振りかざしていては、日本でのがん医療の発展も未来もありえないことを中村祐輔先生も憂えておられました。
今求められるのは本物の臨床腫瘍免疫学の指導者ですが残念ながら、あまりいない状況です。

大学病院の先生方は、標準治療と臨床研究または臨床試験による治療をすることになります。民間医療にあっては、標準治療を知り尽くし、さらに中村先生の薫陶を受けた免疫療法専門医であれば、ネオ抗原を利用した最新の医療を提供することが可能です。



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