福岡がん総合クリニック

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がん薬剤療法についてのFAQ


「抗がん剤は免疫を下げるので免疫療法とは逆行する」と、医師でさえ勘違いされている方が多くいますが、むしろ抗がん剤が、がん免疫反応を助ける場合もあること、抗がん剤単独より免疫療法を併用した方が治療成績が良い、との多くの臨床試験の報告があります。

確かに抗がん剤を長く使っていると、白血球が少なくなることはありますが、抗がん剤でまず減るのは白血球のうち、菌やウイルスを食べる好中球で、がん免疫反応の中心であるTリンパ球ではありません。さらに、体外での培養で活性化されたリンパ球は抗がん剤の影響を逃れて生き残ったがん細胞を攻撃し破壊する役割をしますので、併用することには意味があるのです。
但し、抗がん剤の種類によって最適な免疫療法の種類やタイミングが異なりますし、患者さんによって同じ薬を処方しても副作用の出方も異なるので、施行スケジュール上の調整が必要です。

抗がん剤は細胞分裂の早い細胞に対して、より選択的に毒性を及ぼすため、分裂能の早い細胞ほど抗がん剤の影響を受けて死滅しやすくなります。骨髄で生まれる白血球のなかまの好中球は分裂速度が速いので抗がん剤の影響を受けやすく、おまけにその寿命が数日と極端に短かいために、抗がん剤の影響を如実に受けてしまいます。抗がん剤投与後に白血球数が減りますが、この好中球が激減することが原因です。
しかし、がん免疫の主役であるTリンパ球と樹状細胞は比較的寿命も長く、細胞分裂のスピードも速くないので、すぐに抗がん剤の影響を受けることはありません。
但し抗がん剤の投与期間が長くなったり、放射線治療を併用した場合には、リンパ球にも比較的早く影響が及び、免疫低下につながることもあります。

抗がん剤が、がん細胞の細胞分裂に必要な遺伝子や微小管といった分子を壊す薬剤であるのに対し、分子標的薬剤はがん細胞の生存に係る重要な蛋白質の働きを阻害する薬剤です。飲み薬が多く、抗がん剤よりは全体として副作用も少ないのですが、血管に与える影響や皮膚に与える毒性など、抗がん剤とは異なる副作用も多く報告されています。今後は、抗がん剤より分子標的薬剤が増加すると予想されます。
当院では保険適応外の分子標的薬剤でも米国のFDAやEU医薬品局の認可しているものであれば個人輸入により使用することが可能です。

我国の厚生労働省が保険薬として承認していない薬剤です。当院ではそれを使用することで一時的にでもがんの進行を止める可能性が高いと考えられる場合に、未承認薬を使用する場合もあります。
米国FDAや欧州医薬品局が臨床試験の結果として承認した薬剤は、個人輸入することにより(厚労省から薬鑑証明をもらう手続きが必要)、医師法の範囲において自由診療として処方することができるのです。但し、未承認薬を使って、副作用が発生した場合の医療が保険適応となるかどうかの問題もあり、注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キーツルーダ、ヤーボイなど)は、がん細胞に働くのではなく、Tリンパ球や樹状細胞に影響を及ぼして、がん抗原に特異的に反応するTリンパ球(CTLと言います)の攻撃力の維持・増強を狙う抗体医薬です。
従来型の抗がん剤は細胞分裂の早い細胞を攻撃するものであるのに対し、免疫チェックポイント阻害剤はCTLが働きすぎないようにブレーキをかけようとする免疫の仕組みを阻害する薬剤なので、抗がん剤とは全く異なる作用機序を持つ、免疫療法の薬剤です。
(※著書「がん免疫の真実」p74~75参照)

多くのがんで平均20%程度の縮小率が報告されています。縮小した場合には、抗がん剤と違ってその効果が長く続くこと、数パーセントの患者さんでは完全消失し長く維持されている例(スーパーレスポンダーと言って完治に近い効果を出せる例)などが報告されています。
オプジーボ(OPDIVO)やキーツルーダ(KEYTRUDA)などの免疫チェックポイント阻害剤は、Tリンパ球に作用してその攻撃力を下支えする働きをします。がん細胞の遺伝子異常が多いほど、これを見つけて攻撃できるTリンパ球の数も多くなるので、効果が顕著に出ることが判っています。
ですから、これらの薬剤が劇的に奏功する患者さんは、その患者さんのがん細胞の遺伝子の異常がたくさんあることの証明でもあります。

反面、1割の患者さんで副作用として自己免疫疾患を発病しており、重篤な場合は死亡するケースも出ているので、使用にはかなり慎重な配慮を要します。まずは効果を期待する前に、この命に係わる自己免疫の暴走を防ぐためのバイオマーカーの策定を急がねばなりません。

2017年10月現在で、日本では非小細胞肺がん、腎細胞がん、メラノーマ、頭頸部がん、胃癌で保険適応になっています

使い方次第では併用効果が出せる場合があります。
最も安全で効果が期待できる併用法は、ネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチンとの組み合わせです。免疫チェッポイント阻害剤の効果がある患者さんでは、がん細胞を選択的に強力に攻撃できるCTL(がん抗原特異的キラーTリンパ球)が多いということがわかっています。

ネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチンは、がん細胞に対して強力に反応するCTLを体内に多く誘導する働きを期待するものです。ここで免疫チェックポイント抗体を使ってCTLの自己制御システム(攻撃を自ら抑制しようとする働き)を取り払ってやれば、CTLの破壊力は邪魔されずに維持されるため、最大の効果を発揮すると予想されます。
先ずは、ネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチンの単独での安全性を確認した上で、併用療法の臨床試験が始まるでしょう。メラノーマではすでにその方向で進んでいます。

NK細胞(内容が不明)と少量の免疫チェッポイント阻害剤の併用療法が効く!と喧伝している民間施設がありますが、自己免疫疾患の発症の危惧を無視したというか、免疫の働きの真実と怖さを知らない、とても危険な考え方です。


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