免疫チェックポイント抗体は、急ピッチで保険薬としての適用範囲が広がり、国内では2017年6月現在4種のがんで、世界的には5種のがんで医療ガイドラインに載るようになりました。他に10種あまりのがんでも、検討が進んでいます。
本書では、この免疫チェックポイント抗体について、その実態を詳しく解説しています。
出版:現代書林(208頁) 刊行:2017/5/20 > Amazon書籍紹介ページ
ポイント
初歩から上級まで段階的に学べる
免疫チェックポイントを誤解無く説明するために、どうしても専門用語は避けられませんが、巻末の用語説明の他、図やイラストを多数入れて、分かりやすい表現を心がけました。
内容の難易度によって、項目に「初級(医学の基礎知識がなくても理解できる内容)」「中級(専門用語があり、やや難しい内容)」「上級(理解するのに少し気合いが必要かもしれない内容)」の区分をつけていますので、そちらを参考に、100%理解できなくても、部分的にでもよいので是非正しい用語で読解していただきたいと思います。
読解の手助けに
巻末には、免疫療法を理解する上で大切な基本的専門用語を掲載しました。分からなくなったら、繰り返し読んで確認してください。
目次のご紹介
序章:免疫、その常識のウソ
- 初)「免疫力」アップは意味がある?
- 初)「がんワクチンやリンパ球・NK細胞療法でがんが治る」の?
- 中)免疫の「アクセル」と「ブレーキ解除」でパワーアップ?
- 中)毎日3000個発生しているがん細胞を免疫細胞が退治するって本当?
第1章:「がん」における「免疫」の意味を知る
- 初)「免疫」とは?
- 初)そもそも免疫力って何?
- 中)白血球にはどんな種類があり、どこにいるの?
- 中)白血球を顕微鏡で見てみよう
- 初)白血球の数はどれくらいあるの? 寿命は?
- 中)好中球ってどんな白血球? がんではどんな働きをするの?
- 中)マクロファージってどんな白血球?
- 中)リンパ球は体の中でどのように生まれ、働くの?
- 初)Tリンパ球の育つ臓器、胸腺って何?
- 中)Tリンパ球はがん細胞の何を異物とみなすの?
- 上)がん細胞特有の目印(変異ペプチド)を認識するTリンパ球
- 中)制御性T細胞(ティーレグ)って何? がんとはどういう関係?
- 中)腫瘍浸潤リンパ球TIL(ティル)って何?
- 中)NK細胞ってどんな白血球?
- 中)白血球の機能はどうやって調べるの?
- 初)白血球が少ない人はがんになりやすいの?
- 初)免疫が正常に働かない場合、がんになりやすいの?
- 初)臓器移植とがん
- 初)「免疫力」は老化に伴い低下するの?
- 初)コラムH「免疫」とは体に危険か危険でないかを見分けるもの
- 中)ワンポイントレクチャーHアポトーシスとネクローシス
第2章:免疫チェックポイント分子の発見と、がん免疫療法の新しい夜明け
- 初)「がん治療革命」?
- 初)「免疫」のメカニズムには、免疫を上げる方と下げる方の二つが存在する
- 中)そもそも「免疫チェックポイント」って何?
- 初)新たな免疫療法の夜明けとなった2010年
- 中)チェックポイント分子CTLA‐4って何?
- 初)ラスカー賞に輝いたジェームズ・アリソンってどんな人?
- 初)免疫療法が、がん治療の歴史を変えた瞬間
- 中)免疫チェックポイント分子PD‐1とPD‐L1と、抗体の効果メカニズム
- 中)「がん」が免疫チェックポイントを悪用する?
- 初)次々に報告される抗PD‐1抗体の驚くべき効果
- 初)免疫チェックポイント抗体は、どんながんでどんな人が効くの?
- 初)免疫チェックポイント抗体で最初にがんが完全に消えた患者
- 中)遺伝性がんは免疫チェックポイント抗体が著効する?
- 中)免疫チェックポイント抗体が効いた人では、どうして効果が持続するの?
- 中)免疫チェックポイント抗体の効き方のパターンに違いがあるの?
- 初)免疫チェックポイント抗体のこわい副作用って何?
- 中)コラムH免疫チェックポイント抗体でホスピスを退院した患者さん
第3章:免疫チェックポイント抗体の未来
- 初)免疫チェックポイント抗体で医療財政が破綻する?
- 中)免疫チェックポイント抗体の効果は予測できるの?
- 初)膀胱がん等で米国FDAが承認したPD‐L1抗体薬ティーセントリックの効果
- 中)リンチ症候群以外の大腸がんでは、免疫チェックポイント抗体が効かないの?
- 初)免疫チェックポイント抗体の効果が期待できる乳がんがある?
- 中)免疫チェックポイント抗体は化学療法より優れているの?
- 上)変異ペプチドとネオアンチゲン、そしてCTL
- 中)複数の免疫チェックポイント抗体の併用が始まる
- 初)免疫チェックポイント抗体の副作用と保険外で使用するリスク
- 中)「免疫のブレーキとアクセル」の真実
- 中)免疫チェックポイント抗体時代の今後の展望
- 上)これを理解すれば上級者
第4章:がんワクチン療法と活性化リンパ球療法
- 初)世界初のがんワクチン療法って何?
- 初)コーレイワクチン物語
- 上)どうして細菌を腫瘍の中に入れると、がんが縮小するの?
- 初)がんワクチン療法にはどんな種類があるの?
- 中)ペプチドワクチンの現状
- 中)米国FDAが承認した樹状細胞ワクチン
- 中)最もよく効くがんワクチンのヒント
- 初)活性化リンパ球療法はどうやって始まったの?
- 中)活性化自己リンパ球療法のその後の発展は?
- 中)活性化リンパ球はどうやってがん細胞を認識して攻撃するの?
- 上)リンパ球の活性化ってどういうこと?
- 中)活性化リンパ球を静脈内に投与したらどうなるの?
- 上)Tリンパ球とNK細胞のがん細胞認識の違いは?
- 初)NK細胞療法の可能性
- 中)抗がん剤が、がん免疫療法を助ける?
- 初)リンパ球の保存って可能なの?
- 初)「再生医療法」の下に行われる日本の免疫細胞療法
第5章:免疫細胞療法のエビデンス
- 中)樹状細胞ワクチン療法のエビデンス
- 中)活性化リンパ球療法のエビデンス
- 中)樹状細胞ワクチン刺激活性化自己リンパ球療法での国内外でのエビデンス
- 初)NK細胞療法のエビデンス
- 初)ガンマデルタTリンパ球療法のエビデンス
- 中)がん治療における免疫細胞療法の役割とは?
第6章:「がん免疫療法」の周辺
- 初)世界と日本のがん免疫療法の歴史
- 初)先進医療として行う免疫細胞療法とは?
- 初)高い有効率を謳う免疫細胞療法の信憑性
- 中)免疫療法と分子標的薬剤の併用
- 初)免疫療法と放射線治療の併用効果は?
- 上)CTLは究極のがん分子標的治療
- 中)今後のがん治療はどのように変わる?
- 初)免疫と食事・運動・心との関係
- 中)腸内細菌とがん免疫療法
- 中)栄養と免疫
- 中)糖質制限食はがん免疫にとっていいのか? 悪いのか?